第1部12章 トロイメア
トロイメアに足を踏み入れた途端、突然ぬいぐるみのように動かなくなってしまったナビ。
ここに満ちる不思議な夢の力によって、お兄ちゃんの思念体は生きていた頃の最後の姿となってナビの身体を離れ、そしてホープもまた不思議な力によって、同じ日の姿に戻っていた。
あの日、絶望の中にたった一筋残された光であったはずの兄を殺された日から、ホープの時間は永遠に止まってしまっている、ってことなのかも知れないですね。
お兄ちゃんの名前
遠い昔、夢王は死後もその夢の力をこの世に残す術を持っていて、この力を使えば「本当の名前」と引き換えに、思念体となってこの世に留まることができたと言う。
そうして思念体となった夢王は、もう1度本当の名前で呼ばれると消えてしまう。
生前、書庫に籠ってこうした術について書かれた古い書物を兄が読みあさっていたいたことを知っていたホープは、殺されたはずの兄の気配がしばらくこの世界に留まっていたことを感じていて、恐らく何か別の形で生き続けていたであろうこと、決して2度と名前を呼んではいけないであろうことを理解していた。
悲しい再会
「おかえり」「会いたかった」「もう2度と離さない」と言って、兄と妹をぎゅっと抱きしめるホープ。
永遠とも思えるほど長い間、暗闇しか映してこなかった黒く染まった瞳に、胸が張り裂けそうなほどの喜びと幸せが映し出される。
「あなたを助けたい」と言う妹に、「助けなんてないんだよ」「どこにもなかったんだ」と答えるホープの声は、あまりにも優しくて、温かくて、懐かしくて、気が遠くなるほどに悲しい。
ホープはまるで少年のような瞳で、「このまま3人で、あの頃のように、誰も傷付くことのない場所で、もう一度花に囲まれて幸せに暮らしたい」と訴える。
それでもお兄ちゃんは、「時は戻らない」「仮初めの夢は長くは続かない」と言い返す。
こうなってなお兄はまだこの絶望の世界と向き合えと言うのか、光を探せと言うのかと、ホープの心は少しずつさざ波立っていく。
彼を救いたいのに、一緒に光を見付けたいのに、その想いを伝えるほど、ホープの絶望は深い黒に染まってしまう。
そして、最愛の兄と妹がなぜここまで自分を拒絶するのか、なぜこの世界を選ぶのか、それは共に旅をしてきた王子たちがまだここに居るせいだと結論するホープ。
ついに持てる力のすべてを解放し、とんでもない大きさのエネルギーを持つ巨大なユメクイを生み出して、先に夢世界を終わらせるという強行手段に出てしまう。
終わりの始まり
懸命に戦い続けるアヴィ、メディ、ルーク、ヒナタ、白葉、紫雨、カイリだったが、みんな徐々に夢を奪われ、やがて地面に倒れ込んで、ユメクイに命を奪われた多くの人々がそうであったように、身体を硬くして目を覚まさなくなってしまった。
彼らの肩を揺すり、呼びかける姫。しかし彼らから返事が返ってくることは2度とない。
今まさに夢世界が終ろうとしているその時、お兄ちゃんは何かを決心したように語り始めた。
自分が家臣の手によって殺されてしまったあの日、優しかった弟は絶望の化身へと姿を変えてしまったのだと思った。
大好きだった妹をこの世界に呼び戻し、彼女に説得してもらえば、あるいは元の優しい弟の姿に戻ってくれるのではないかと考えて自分はここに来た。
しかし、それは間違っていた。
君は何も変わっていなかった。
絶望の化身なんかじゃない、誰よりも優しい、昔の弟の姿のままだった。
そして愛する者を守ろうとするたびに世界を傷付けてしまう君。君はこの夢世界にではなく、本当は自分自身に絶望しているのだと。
そう言って抱きしめるように、兄は弟の胸を剣で貫いた。
両親が殺された瞬間の絶望も、妹と別れる瞬間の絶望も、そして兄弟が殺される瞬間の絶望でさえ、自分はホープひとりに背負わせてしまった。
これからは一緒に背負わせて欲しいと寄り添って、弟と共に逝くことを選んだ兄。
兄は弟と共にこの世界の最期を見届け、自分たちの幸せそのものであった妹を、もう一度元の異世界に戻すことにした。「夢を見て、ごめんね…」
指輪の力
そして不思議な力によって元の異世界へと引き戻されそうになる姫。
静かに目を閉じて、自分の行く先と、いま目の前で繰り広げられてきた惨劇を振り返る。
それでも、胸いっぱいに溢れてくるのは、光。
たくさんの人たちが自分に託した想い。
一緒に戦ってきた仲間たちの言葉。
「私はまだ何も諦めない」
声を上げ、指輪を握りしめ、強く、強く、祈る。
するとこの祈りに呼応した指輪が光り、倒れていた仲間たちが次々と目を覚まし始める。
「夢の中でずっと姫が自分たちを呼ぶ声が聞こえていた」と言う王子たち。
もう一度立ち上がり、剣を構えます。
いよいよこれが最後の戦い。
ホープが持てる力のすべてを解放して生み出してしまった巨大なユメクイに、最後の力を振り絞って立ち向かう。
いやしかしこれがねぇ。
もうとんでもない強さなんですよ(白目
ぶっちゃけここに辿り着くまでもホント鬼のようなクエストに次ぐクエストで、毒ピース、ハトピ消し、麻痺、被ダメ1万越え、もうボロボロです。
正直何度もトロイメアを一旦離れてプリンスレッスンと妖精狩りに出かけてますよこの姫は←
マジでもうエンディング見れないかと思った。
でもわたしには秘儀があった。
「妖精石を消費してバトルを続けますか?」
「はい!!!!!」
命と引き換えに
しかし、巨大なユメクイは飛び散ったかのように見えてもどこからともなく湧き上がって何度でも蘇る。倒しても意味がなかったんです。
もう一度闇の渦となって、ほとんど瀕死状態の王子たちに再び襲い掛かろうとするのは、さっきよりもずっと大きく禍々しくなったユメクイの姿。
すると、何かを決意したようなホープがゆっくりと口を開いた。
「妹を…頼む」
「泣かせないよう、笑顔でいられるよう」
「妹は俺の、俺たちの、幸せそのものだから」
そして残された最後の力を使って、自分の命と引き換えに、この世に自分が生み出したすべてのユメクイを消し去り、夢世界を光で包み込んだ。
ユメクイのいない世界
旅の終わり、そこには立派に成長した王子たちの姿と、ほんの少し強くなった姫の姿、そしてぴょこぴょこ動くぬいぐるみナビの姿があった。
光が溢れ、希望が溢れ、夢が溢れる夢世界からは、ユメクイとホープの姿だけがなくなっていた。
共に旅をしてきた王子たちはそれぞれが国に戻り、復興に忙しくなる。
姫とその執事ナビも、夢王国トロイメア王家の意志を継ぐ者として、亡き父上が愛したこの世界を同じように愛し、守っていくことを誓い合った。
ホープの個スト
正直メインのラストがこんな結末になっちゃうとは思ってませんでした。(泣いてる
しかも12章はストよりもバトルがメインだったのでひたすらパズルを消している感じでこれまでのようにあんまりゆっくり物語の世界に浸れなかったんですよね。
でもようやく理解しました。たぶん12章クリアで手に入るホープの個ストが、この長い長い物語の本当のエンディングになってるんだと思います。(以下ネタバレ
命と引き換えにユメクイを世界から消し去ったホープの行く道には、幼い頃の幸せな記憶が蘇っていました。
それは双子の兄がまだ「ライト」と呼ばれていた頃のこと。
妹が生まれた喜びの瞬間から、家族が幸せに過ごしてきた日々、そしてあまりにも傷付き過ぎてしまったせいでホープが見落としてきてしまった、絶望の中でもひときわ強い光を放っていたたくさんの小さな希望。
それをひとつひとつ、絡まった糸をほどくように見つめ直して、多くのことに気が付いていくホープ。
違う道を歩み始めてしまったはずの兄妹たちは、ここではどんな時でも一緒に同じ夢を見て、叶えられなかったはずの未来を次々に叶えていきます。
そして大人になった3人の兄妹は、息をのむほどに美しい景色の中を、手を繋いで歩いてる。
「ホープお兄ちゃん、ライトお兄ちゃん」
「こんなの、久しぶりだね」
「なんか懐かしいね」
「ああ、小さい頃のことを思い出す」
それは夢なのか、本当にあったはずのもうひとつの未来なのか、一瞬のような、永遠のような、何もないような、何もかもがあるような不思議な場所。
そこでホープはきっと、なりたかった誇らしい自分になって、愛する人たちに抱えきれないほどの愛を伝え旅立った、とわたしは解釈しました。
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