第2部10章 メテオベール
一行がトロイメアを出発してすぐ、流星の国メテオベールの王子「シュテル」が、流れ星に乗って姫に会いに来た。
メテオベールの王族は「地上の人々の願いを叶えること」を使命としており、「願い」を感じ取ると流れ星に乗って地上とメテオベールの間を行き来することができる。
ただし、生まれた時に与えられる「星屑時計」と呼ばれる砂時計の入れ物に入った星屑が人の願いを叶えた数だけ落ちていくため、彼らは「自分の命と引き換えに」誰かの願いを叶えている。
メテオベールの王族は本来は信じられないほど長寿で、どんなに人の願いを叶えても人よりも長く生きることができるが、身体の弱いシュテルは生まれた時から星屑の総量がとても少なかった。
個ストだと姫が「シュテルさんと一緒に居たい」と願って星屑が落ちなくなるって設定だったような気もするんだけど、メインだと「姫が願ってくれたから流れ星の力を使わずに願いを叶えることにした」って設定みたいですね。
そして、シュテルは今夜「アダム」という名の青年の強い願いを聞いて地上にやって来たと言う。
彼の願いを叶えるためには姫、ルーファス、シリルに同席してもらわなければならないということで、一行は流れ星に乗ってシュテルの国テオベールへ。
でもその間にキエルが帰ってきちゃったらもう合流できないよねw
あれそう言えばキエルって最初どうやって姫ちゃんを見付けたんだっけ。
姫ちゃんの気配とか感じれるっけ←
本当の願い
メテオベールに到着すると、恐らく城の一室にアダムのものであろう気配を感じ、彼の力によって溢れ出て来たユメクイが街を襲っていた。
子どもたちが多く、避難誘導に手こずっていると、一行の代わりにユメクイを斬り払ってくれる人の姿が。
それは「那由多からの書簡が届いて助けに来た」と言うヒナタと紫雨だった。
姫は彼らにも事の経緯を説明し、「アダムの願いを叶えるための席」に同席してもらうことに。
シュテルによって一行が案内されたアダムの待つ部屋には、すでにフレイグ、イザーク、イヴァンの姿があった。
一触即発のピリピリとした空気が流れるも、「アダムの願いを叶えるための場所」「諍いはやめて欲しい」というシュテルの言葉に、アダムを想う全員の心はひと時ひとつになった。
改めてシュテルがアダムに「君の願いを聞かせて欲しい」と言うと、アダムは「願いはひとつ」「もう死にたい」「しかしあれからどうしても死にきれず今日まで生きてきてしまった」と声を震わせながら答えた。
しかしシュテルは、自分が聞いた「アダムが本当に心から願っているはずの強い想いと違う」「願いは本人が正しく口にしてくれないと叶えられない」と困惑する。
イヴァンはシュテルに「アダムが本心では何を願っているか教えて欲しい」と懇願するが、自分たちに届いた願いは「例え家族でも勝手に誰かに話すことはできない」とシュテルはこれを拒否する。
アダム、フレイグ、イザーク、イヴァンを残して部屋を出た一行は、アダムがどうしたら本心を話してくれるのかと考える。
するとメディが沈黙を破り、「パーティーをしよう」と提案。
ルーファスやシリルは「なに言い出すの?」って心底おったまげなんだけど、こういうのに「それは名案だね」って乗ってきてくれるのがメイン1部組。
メテオベール城の中にあるホールを折り紙や風船で飾り付け、アダムやフレイグたちには手製の「招待状」を手渡す。
フレイグたちも最初はおったまげなんだけど、「アダムのため」って言ってちゃんと参加してくれるんですよねw
手作り感満載の飾り付けに「イザーク兄さんが昔やってくれたお誕生日会みたい」ってほっこりしてくれたりもして。
和やかな雰囲気で、全員が一堂に会し、食事を楽しんだり、ボードゲームをしたり。
ここストスチルになってるんですけど、あまりにもみんなが幸せそうな笑顔で、今争いの最中に居る者同士だってことを忘れてしまうくらい素敵な時間でした。
メイン1部組って、基本的にみんなキエル並のコミュ力おばけなんだよね。
しかも、アヴィはまぁいつも通りひたすら姫一直線だし、メディとルークはお笑い漫才コンビだし、ヒナタは暑いだの寒いだのお腹減っただの言ってる係だし、白葉は己が道を行くし、紫雨は全肯定マンだし、カイリはうるさいの放置するマンだったから、みんな遠慮がなくて素直で仲が良くて、故にひたすらボケ倒しだった。
今回紫雨とヒナタが加わったことによってめちゃくちゃその1部の雰囲気が戻ってて、そこにトルークビル兄弟が投入されると、フレイグがあの「チョコフレイグ」とか言ってた頃の全力ボケ担当の感じに戻っちゃって、イヴァンはそこそこ天然ボケだし、アダムは紫雨と同じだし、ルーファスやシリルは手抜きツッコミだから、イザークがただ1人全員分のボケに全力でツッコミ役をがんばらないといけなくなってるの、かわいそうでかわいくて笑ってしまったよw
ルーファスがイザーク兄さんばっかりからかって遊んでた気持ちがすごくよく分かる。
全力ツッコミしてる時のイザークは本当に輝いてるw
そうして雰囲気が和んだところで、シュテルは改めてアダムに尋ねてみるが、返ってくる答えは同じ。
こうなったら「強行手段」だということで、シュテルはある考えのもと、全員を流れ星に乗せ、「もう間も無く崩れて無くなる」という小さな星に降り立った。
生きたい
今にも足元が崩壊しそうなその星に「アダムだけを降ろして去る」と言うシュテル。
「やっぱり彼が口にする方の願いを叶えることに決めた」ことを兄弟たちに告げるが、これは本当にそうなってしまったときにこそ彼の口から真の願いを聞くことができるだろうと踏んだ、すべてシュテルの「演出」だった。
そうとは知らない兄弟たちは、今まさに崩壊しようとする地面の上に降り立ち、兄弟に感謝と別れの言葉を紡ぎ始めるアダムを、懸命に説得しようとする。
いちばん始めに取り乱したのはいつも冷静なハズの長男フレイグ。
今までに聞いたことがないような感情的な声を上げ、「お前からそんな言葉は聞きたくない」「何故なんだ」「お前の中には母さんが生きているのに」と叫ぶ。
「兄貴、その話は…」と慌ててイザークが兄を制止すると、「いいんだよイザーク兄さん」「知っていたから」とアダム。
あの日、母に抱かれた瞬間、自分の身体が楽になるのをおぼろげに感じていたアダムは、自分がしてしまったことになんとなく気が付いていて、でも「自分が母さんを殺してしまった」「みんなから母さんを奪ってしまった」と考えると恐ろしくて、誰にも打ち明けられず、ずっと独りそれを抱えて生きていた。
やっぱり知ってたんですね。
何も知らなかったシリルは、いつもみんなの愛を独り占めにして「ヘラヘラ笑っているだけだ」と思っていたアダムが、その笑顔の裏に壮絶な苦悩を抱えていたことを知り、「それでもいつも自分にいちばん優しく接してくれたのはアダム兄だった」と、これまで自分がしてきたアダムへの酷い態度や発言を悔やみ、彼にずっと抱いてきたたくさんの想いを打ち明ける。
そうして兄弟それぞれが「アダムと生きたい」その本心をそれぞれの言葉で語り、「僕だって本当はみんなと生きたい」とようやく本当の願いを口にしたアダムが、伸ばされたイヴァンの手を取って助かる、というシュテルの思惑通りに事が運んで、兄弟はさらに絆を深めた。
ありがちな展開だと思うし、きっと文字を読んでるだけだったらすっと読み進められるシーンだったと思うのだけど、やっぱり声優さんって凄いですよね。
泣きました←
↑特にシリルがアダムとイヴァンの関係について「本当はいつもいつも羨ましかった」って言うシーン、シリルも泣きながら喋ってる設定なんですが、ちゃんと本当に泣いてるんです彼の声が。つられて泣きました。涙
止められない
「本当はみんなと生きたい」「ずっと一緒に居たい」でも「自分はそれを望んではいけない」「死ななければならない」と、本心や本能が求めるものを理性で抑え込んでいたアダム。
彼は「死にたい」と「言えない」の間で苦しんでいたわけではなく、「生きたい」と「でも死ななければならない」の間で苦しんでいたんですね。
姫や王子たちに、その心を抑え込む必要なんてない、生きていい、願っていい、そう声を掛けられたアダムは泣きながら、「僕は生きたい」と力強い声で何度も繰り返し、兄弟たちは安堵の表情でそれを見守った。
しかし次の瞬間、アダムの身体からは今までに感じたことがないほどに禍々しい気配を纏った闇が吹き出し、イヴァン目掛けて一直線に襲って来た。
今までどれだけ飢えても「兄弟にだけはユメクイを差し向けたことがない」というアダムのその行為にイヴァンは愕然とし、庇うように前に出たシリルが大鎌でその闇を斬り払うまで、何が起こったのかも分からずただ立ち尽くしていた。
アダムに目をやると、どうも様子がおかしい。
感情を失い、壊れてしまったように、「夢が欲しい」と繰り返し呟く。
恐らく「死ななければならない」という理性で「生きたい」という本能を抑え込んでいたアダムは、その枷が外れたことで「奪う力」が暴走している状態。
過去にも同じように力を暴走させてしまったことがあるアダムだが、今回は「それとは比べ物にならないほどの強大な力」だと青ざめるナビ。
トルークビルでの暴走では、キエルが自身の奪う力でアダムの闇を身体の中に取り込み、そうしてアダムの力が弱っているところに姫が夢を与え、なんとか抑え込むことに成功した経験があったため、今回は兄弟の中でもとりわけ奪う力が強いというルーファスとシリルの2人がキエルの役を担い、同じように事を収拾しようと試みる。
姫の夢の力でほんの一瞬アダムは自我を取り戻し、「ごめん」「でももう止められない」と言葉を振り絞るも、また直ぐに暴走状態に戻り、その身体から溢れ出る巨大な闇を翼のような姿に変え、空へ飛び立つと、「夢の気配を感じる方へ」と飛び去ってしまった。
イヴァンはシュテルの肩を揺すり、「アダムの願いを叶えてくれ」「今すぐあの異端の力からアダムを解放してくれ」と声を荒げるが、「世界の理に反することは叶えられない」とシュテル。
あの「ふーっ」てして星を出して願いを込めるやつでシュテルさんが何とかしてくれるのかってちょっと思ってしまったけどそうは問屋が卸さないですよねぇ。
てか、アダムってさ、「特別奪う力が強い異端児」であって、「生まれてから一度も身体に夢が満ちたことがない」とかって言われてたけど、「奪う力を放出するかしないか」ってのはあくまで本人の意志や能力に左右される、って考えていいのかな。
例えばアトラは「大切な兄トロイが自分の身代わりになって死んでしまうかも知れない」と感じた瞬間に、ホープは「また醜い人間たちに今度はライトや妹を殺されるかも知れない」と思った瞬間に、それぞれ「自分の意志」とは関係なく「奪う力が暴発」してしまっていたように見えたけど、それ以外のときはどんなに強大な力をその身に秘めていたとて周りの人と同じように生きて、「必要な時にだけその力を表に出す」ということができていたように思う。
正直「奪う力の大きさ」と「身体が必要とする夢の大きさ」って全然別物みたいに見えたよなぁ。
であればわざわざ兄弟が夢を奪ったり「価値のない人間には与えない」とかごちゃごちゃしなくても、姫が年に1回くらいぶっ倒れるまでがんばればアダムって普通に生きられるんじゃないの?
わたし、今まで「夢の力」って「常に」「いつも」「世界中のすべての場所に」「あますとこなく」夢王が与え続けてるもんなんだって思ってたんだよ。
けどさ、前章で「アトラス」ってひとつの国に夢を届けるのが「年一で良かった」って分かったわけじゃん。
てことは夢王って、今週はこの国に、再来週くらいにはあっちの国にって感じで、間隔開けて順番に夢を配ってたってことになるよね。
アダムを「ひとつの大国」とか「小国5つ分」とかって捉えるなら、できないことじゃないと思っちゃう。
実際姫がぶっ倒れるまで祈ったあの日以来、今日までアダムは身体の中にその夢が残ってて、床に臥せることもなく、街をほっつき歩いて過ごして来れたんだもん。
あと、ユメクイはそれを生み出す人が絶望とか悲しみとか怒りとかそういう「負の感情」に支配されてしまったときに暴発するのかと思ってたけど、アダムを見てるとどうもそれだけじゃなくて、「悲痛な願い」とか「光を見失いたくない」っていう強い想いによっても暴走してしまうらしい。
それって、逆にこういう「留め難いほど激しく強い何かしらの感情」に駆られてしまうようなことがなければ、「2度と力は暴走しない」ってことなのかな。
今この時この状態のアダムを決死の覚悟で抑え込むことができたら彼はもうこの先一生平穏に生きることができるのか、それともアダムが何かの拍子にこうして暴走して世界を終わらせようとするのをその度にこの子らがこうやって捨て身で抑え込んでボロボロにならなきゃいけなくて、果たしてそれが「アダムも幸せに生きられる世界」なのか、その辺がすごくふわっともやっとしてる気がする。
「アダムが力をコントロールできるようになる鍵ってなんなのか」「そもそも異端児は力ってコントロールできないものなのか」「コントロールできるようになったら激しい飢えは感じなくなるのか」、この辺がひとつも分からないからただ闇雲に同じことを繰り返しているように見えてしまうよね。
ワンチャンこれからキエルが持ってくる「アトラの指輪」がその「コントロールできない力」によって世界を壊してしまったアトラの思念体から生まれたものなので、そういう暴走しそうになるアトラの王を「抑える力」みたいなものも実は宿っていて、その辺の兼ね合いで力が強いから「誰にも使えなかった」ってことなのかも知れないけど、そうなるとユアンからキエルが受け継いだ指輪は本当にアダムが持っていなきゃいけないものってことになる。
フレイグの言う通りだったってことになるけど、だいじょぶそ?←
あるいはもし今の暴走さえ抑えられればあとは安泰で、今回はユメクイを弱らせる力より姫の与える力が足りないことが問題だったんだとしたら、最後は天国のお父上やライトが一緒に祈ってくれるっていう、ドラゴンボールの親子3代かめはめ波みたいな展開になるのかも知れないね…(殴
それぞれの決意
目のハイライトなくなってカタカナで喋るようになってしまったアダムが空に飛んでってしまった後、このままではアダムどころか世界そのものが壊れてなくなってしまうかも知れないという不吉な予感に駆られ、全員が言葉を失う中、フレイグはひとり不敵な笑みを浮かべていた。
「アダムが感情を失ってしまったのは返って好都合だ」「これで2度とアダムはその力と優しさの狭間で苦しむことなく、この世界の王座に君臨できる」とフレイグ。
「本当にそれでいいのか」「アダムの笑顔はどうなる」と詰め寄るアヴィに、「僕がアダムを託されたんだ」って怒鳴るフレイグの声も、鬼気迫る感じで、なんだかすごく胸に来るものがありました。
しかし、やっとアダムの心からの笑顔と「生きたい」という本心を聞くことができたイヴァンは、「兄さんのやり方ではきっとアダムの笑顔は取り戻せない」と、フレイグの元を離れることを決意。
一方イザークは、ルーファスに「弟たちを頼む」と残し、「兄貴をひとりにするわけにはいかない」と言って、指輪を奪いにアトラスへ向かうフレイグの後を追った。
なんかフレイグってさ、もちろんお母さんの想いに応えたいって気持ちもあるんだろうけど、たぶん自分が「お父さん」なんだよな。(ぇ
ホラお父さんってさ、ときどき「これがお前にとっての幸せなんだ」って言って、息子の進路勝手に決めちゃったり夢を台無しにしちゃったりすることあるじゃない。
でもお父さんからしたらさ、その子がまだ言葉も話せない、歩けない、くにゃくにゃで、食事もひとりじゃできない頃からずっとずっとその子の幸せだけを願って、愛して、導いてきた。
時にその子が意志を通そうとすることもあるんだけど、例え憎まれても「そうじゃない」って道を正して、結果その子は幸せに成長していくんだよね。
だけど、いつからか子どもは子どもじゃなくなって、お父さんに守ってもらわなくたって生きていけるようになってる。
そしてお父さんは、それがあまりにも突然やって来るから簡単には受け入れられなかったりする。
フォーマも「フレイグからは毒が感じられない」って言ってたけど、それって息子をなにも不幸にしてやろうとしてそうしてるお父さんが居ないのと同じことなんじゃないかな。
フレイグは母亡き後ひとりで小さな弟たちを守ってこなくちゃいけなくて、文句言われても、嫌われても、強引にでも彼らを幸せな道に導いていくことが使命で、それはずっと正しかった。
「お父さんは間違ってる!!!」って急に息子に突き放されたらショックだし、今まで自分が人生を捧げてして来たことは「間違ってたのか」って思ったら立っていられなくなっちゃうから、「そんなことないずっと正しかったじゃん」って縋ろうとしちゃうんだけど、これって「親の心子知らず」とかってわけじゃなくて、親は子どもに「間違ってる」って言われたらそれ「今までありがとう、でももうひとりで大丈夫だから」って言われてるんだって思わなきゃだめだよね。
わたしにも思春期の息子がいるからさ。こうやって子どもたちが次々に手を離れていくのを親は受け入れなきゃいけないんだよなって考えさせられたわw
シリルの「光」
今章は「シリル回」って言ってもいいくらいシリルがとにかくかっこよかったです。
実はアダムがユメクイを翼にしてメテオベールから飛んで行ってしまった後、「シリルの何倍もアダムの力を取り込んだ」というルーファスは満身創痍で、座り込んで、肩で息をしながら、「ここまでしてもダメなのか」って想いを姫にぶつけて来ます。「光なんてなかったじゃん」って。
ちなみにこの「どこにも」がすっごい切なくて泣きます←
そしたらシリルがルーファスやイヴァンに「暗い顔やめて」って、「お姫様、ぼくもアダム兄を助けたい」って言ってくれるんです。涙
小さい頃、「兄さんたちのおさがりなんて欲しくない」って言うシリルにアダムが新品のおもちゃをくれたことがあったらしいんです。「シリルが生まれて大きくなったら使ってもらおうと思ってとっておいた」って。
でもシリルは素直になれなくてそれを突き返してしまいました。「そのことをまだ謝ってない」「ちゃんと謝りたい」って。
正直今アダムをどうしてあげたらいいのかってわたしさっぱり見当も付かないんですが(ぇ、シリルの言葉にすごく元気付けられました。ありがとうシリル。
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