夢100ゆめくろメインストーリーのネタバレ満載備忘録
夢世界を語る

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第2部9章 トロイメア

トロイメア城に到着した姫、アヴィ、ナビ、キエル、ルーファス、シリルの6人。

かつて与える者と奪う者が何を考え何を願い何を未来に繋ごうとしたのか、それが隠されているかも知れない場所について、「城内の部屋をすべて把握し書物もすべて読み尽くしている」というナビが、「心当たりがある」「唯一どうしても足を踏み入れることができなかった」と言うのが、「祭壇の奥にある」という部屋だった。

そもそも祭壇は夢王が「世界に夢を与えるために祈りを捧げる場所」であり、夢王以外入ることは許されなかった神聖な場所。
そのさらに奥にあるという部屋の扉を開くためには、「トロイメアの指輪」と「祈り」が必要だった。
指輪は姫が持って異世界に飛ばされてたのでナビは鍵を開くことができなかったんですね。

祭壇に足を踏み入れ、部屋の前に立ち、姫が指輪に祈りを込めると、重厚な扉がゆっくりと開き、その奥には「天井まで埋め尽くすほどの書架に囲まれた部屋」が姿を現した。

すると部屋のそこかしこから「強大な夢の力」が集まって来て、浮遊するひとつの光の塊になる。

その光は「トロイ」と名乗る初代トロイメア国王の思念体であり、「トロイメア王家の意志を継ぐ者がこの祭壇を訪れるのを待っていた」と言う。

ちなみにこの思念体はライトがナビになった力とは「似て非なるもの」。
トロイは「トロイメアの指輪を創り出した存在」であり、祭壇に留まった歴代の夢王たちの力が彼の思念をこうして形にしているのだそう。

そして歴代の夢王たちはみな、この祭壇でトロイのいざないによって「夢世界の興り」について知らなければならなかった。

一行はトロイの放つ夢の力により、「世界の始まり」へと導かれて行く。

夢世界の興り

この世界は何もない無の空間に「光」と「闇」が生まれるところから始まった。
光はさまざまな生き物の生命を誕生させ穀物を実らせ、闇は生き物に死をもたらし穀物を腐敗させる。
やがて光が持つ創造の力は「トロイ」、光を奪う闇の力は「アトラ」と呼ばれるようになった。
生ある者はまた新たな命を紡ぎ、やがて死を迎えるという循環の中で、人はトロイに感謝し、アトラを畏怖する。

あるとき、この「光」と「闇」の世界に、「不思議な能力を授かった双子の兄弟」が誕生した。

兄は光を生み、息吹を吹きかけ、さらに光を灯して人に与えることができる「光の力」を、そして弟はその光が増えすぎて肥大し美しい形が保てなくなる前にこれを奪い、世界の光を安定させることができる「闇の力」をその身に宿していた。
いつしかこの「光」は「夢」と呼ばれるようになる。

世界に夢を与え奪う神のごとき存在。
彼らは人に請われ、世界の「王座」に就いた。
いつからか夢を与える王には「トロイ」、奪う王には「アトラ」と名が付いた。

「世界の王家」は常に「双子の王」を持ち、どちらかに必ず双子の王子が生まれ、王子たちは必ずそれぞれがトロイとアトラの能力を宿していた。

生命が誕生してやがて朽ちるのが当たり前であるように、歴代の双子の王たちが持つトロイとアトラの力は対であることが当たり前で、それが不変だった。
そして、命の誕生を喜び死を悼むのが当たり前であるように、人がトロイに感謝の眼差しを、アトラに畏怖の眼差しを向けるのもまた、「世界の理」だった。

アトラの悲しみ

あるアトラ王は、心の優しい人だった。
そのため人が自分に脅威の眼差しを向け、兄に愛慕の眼差しを向けることに、耐え難い孤独感を抱いていた。
どうして自分は世界を恐れさせることしかできないのだろう。
世界を愛し世界から愛されることができる兄が羨ましい。
そしてアトラはいつしか「夢を奪うこと」を止めてしまう。

「このままでは夢が肥大して欲になってしまう」と感じたトロイが「なぜ夢を奪わないのか」アトラに尋ねると、アトラは「人が夢を奪われることを望んでいない」「夢を奪われることを恐れてる」「それをしなければならないのが辛い」のだと胸の内を打ち明けた。

アトラはただ、「世界に笑っていて欲しい」だけだった。
恐怖のない、闇のない、絶望のない、ただ陽だまりのような夢世界が大好きだったから。
アトラは夢を奪うことを止め、世界を静観し続けた。

そうして夢が奪われなくなった世界は、大きくバランスを崩し始める。
世界に溢れ過ぎた夢は徐に肥大し、やがて「欲」に変わると、夢を喰らい過ぎた人間たちはさらに夢を欲しがるようになった。

多くの夢で満たされながら「足りない」と嘆き、さらに夢を渇望し、理性を失っていく。
その焦燥の矛先は次第に、「夢を奪われているせいだ」とアトラに向けらるようになった。

そしてある日、欲に蝕まれた人間たちによって、ついにアトラは襲撃されてしまう。

駆け付けたトロイはアトラを庇うように人の前に立ち、「アトラは夢を奪っていない」「君たちが怖がらないように」「君たちのためにだ」と懸命に訴えるが、欲に囚われた人間たちの耳にはそれが届かない。

アトラに斬りかかろうと振り上げられた剣は、これを庇おうと彼に覆いかぶさったトロイ目掛けて今まさに振り下ろされようとする。

するとその瞬間、突然アトラの身体から黒い瘴気のようなものが湧き出して、辺り一帯を闇で覆ってしまった。

アトラの身体からは次に黒い闇が生まれ続け、闇は世界中を駆けて行った。

闇は雲集霧散、おびただしい数の魔物のような姿に変貌し、まるで世界が「始まりからやり直そうとしている」かのように、行けとし生けるものすべてから夢を奪っていく。

そうして世界から奪われた夢はすべてアトラの身体に取り込まれ、彼の身体は軋み、焼けるような痛みが走り続けた。

トロイメアとアトラスの誕生

トロイとアトラ、そしてわずかな人間と生き物を残し、ついに世界は枯れ果てた。大地は黒く焼け焦げ、空は灰色の雲に覆われている。

そんな荒廃した世界に残された人たちにとって、アトラは「奪う力で世界を守る王」ではなく、「夢を喰う魔物を操り世界を破壊した王」となった。

誰よりも夢に満ちた世界を愛し、人の笑顔を愛していたアトラは、床に伏したままトロイに尋ねる。
「俺は世界をどうしてしまったんだ…?」

しかし、トロイは見せたくなかった。
誰よりも優しいアトラには、美しい緑に囲まれ、青い空の下で、暖かな風だけが吹き抜ける、澄んだ水が癒しを与える、そんな夢に満ちた世界でゆっくりと、身体と心を休めて欲しかった。

荒れ地と化した夢世界から遠く離れた地に、トロイはアトラのために生み出した温かな夢だけを集めて、そんな豊かな場所を用意した。

今はここでゆっくり休んでいて欲しい。
自分は世界から失われた夢を、もう一度世界に溢れさせてみせる。
そうして世界が元通りになったとき、もう一度2人で始めよう。

しかし、世界が失った夢の量はあまりにも多く、昔のような美しい世界を取り戻すためには途方もない年月が必要だった。

そして無情にも、トロイとアトラの寿命は尽きてしまう。2人の王がこの世界から消える瞬間、彼らの願いは夢の力に呼応して、一対の指輪へと姿を変えた。

夢を増幅させ人に与える力を持つトロイの指輪と、夢を奪い整える力を持つアトラの指輪。

「世界が元通りになったとき、もう一度2人で」という彼らの約束は、それぞれの指輪と共に、それぞれの子孫たちに受け継がれることとなった。

彼らの後に双子の王子が誕生することはなく、トロイにはトロイの力を継ぐ者、アトラにはアトラの力を継ぐ者だけが生まれ続け、トロイの王は「世界を夢で満たすこと」、アトラの王は「世界に夢が満ちもう一度奪う力が必要になるのを待つこと」を使命として、それぞれの地に王家を築いていった。

こうして2つに分かれた国は、やがて「トロイメア」「アトラス」と呼ばれるようになる。

約束が果たされるとき

長い、長い、長い年月をかけて、世界はゆっくりと復興していった。
世界中にたくさんの小国が生まれ、王家が誕生し、それぞれに発展し、豊かになっていく。

そうしてトロイとアトラが夢見た美しい世界がようやくその形を取り戻そうとしていた一方で、これに至るまでのそのあまりにも長い年月は、世界がアトラスをその記憶から消してしまうのに充分過ぎるほどの時間だった。

いつの間にか夢世界はトロイメアの夢王が夢を重ねて築いていくものになっていて、アトラスは歴代の夢王たちだけに伝わる「神話」のような存在になっていた。

しかし、ある代の夢王とある代のアトラス王が世界の変化に気が付き始めた。

「世界に夢が溢れ過ぎている」
「夢が肥大して欲になっている」
「世界中で争いが増えている」

夢王は神妙な面持ちで、今まさに夢世界が太古のあるべき姿に戻ろうとしているであろうこと、その証拠に自分の元に「恐らくトロイとアトラの力を宿している双子の兄弟」が誕生したことを打ち明ける。それを聞いたアトラス王は「言い伝えの通りだったのか」と驚いた。

話をしていたのは姫の父上である先代の夢王とキエルの父上であるアトラスの王ユアン。

夢王は、きっと「奪う力を忘れ去ってしまっている世界」から強く反発される存在となってしまうであろうユアンの身を案じながらも、「これからはトロイメアとアトラスで夢世界を治めよう」「夢世界を変えよう」と決意する。

2人の王は太陽のように笑い、これから訪れるであろう未来、トロイとアトラの約束がついに果たされた幸せな夢世界に想いを馳せ、きっと手を取り合って自分たちの意志を受け継いでいくであろう息子たちについて、希望に満ちた様子でいつまでも語り合っていた。

はぁ…しんど←

なんか読むのしんどくて、ボロボロ涙こぼれたりして、何回も中断したり、最初から読み直したり、そのたびに自分の中に生まれる感情とか解釈が変わったりして、落とし込むのホントに難しかったです。

でも、いろいろと考えあぐねてようやくわたしはホープの死から一歩前に進むことができた気がするし、受け止められた気がする。

うまく言えないけど、ホープひとりが何かを背負っていたわけじゃなくて、誰かひとりが何かを間違えてしまったわけでもなくて、そんなものがただの塵でしかないと感じられるほど大きいもの、ゆっくりと変わって消えていくものが集まってできている遥か壮大な何かが持つ、逆らうことができない壮大な動き、壮大なうねりのその中に、カラビナのことも、メイとアマツのことも、デジールの反乱も、ホープの死も、ただ空を行く雲みたいに、流れる水みたいに、「みこころによりご計画のままをみな実現される方の目的に従って」存在してただけだったんだなって思えたら、ちょっと楽になったって感じかな。(は?

結局夢王が生きてたって、ホープが生きてたって、きっとどこかで何かが歪んで、今度はユアンやキエルがアトラと同じ目に遭ったりとか、何かしら上手くいかなかったはずなんだよね。なるべくしてこうなってるんだ。

そう言えば1部読んでるときわたし「夢世界って各地で争いごと多くない?」ってよく思ってたんだよなぁ。クーデターとか反乱とか戦争とか、メインストだけじゃなくいろんな国のいろんな王子の個ストにも出てくるしさ。太古のあるべき姿に戻ってたんですね。

アトラの指輪

トロイの思念体が放つ強い夢の光から解放されると、一行は立ち上がれなくなるほどに体中の力を奪われ、憔悴し切っていた。
やっとの想いで部屋を出ると、そこには悠然と立ちはだかるフレイグ、イザーク、イヴァンの姿が。

シリルの身体にあの謎トランシーバーシステムを仕込んでいたと言うフレイグは、夢の力に阻まれながらも一行が話す声を盗聴していたらしく、キエルに「アトラの指輪」を渡すよう要求してくる。

アトラの指輪は「力が強過ぎて危険」だと言うキエルに、「さらに強い力を持つアダムなら使いこなすことができるはず」だとフレイグ。

指輪を奪おうと攻撃を仕掛けてくるイザークとイヴァンだったが、身体の力を奪われた一行はこれに押されてしまう。

すると、いいところで天窓から見覚えのある2人が助太刀に。「ケナルから手紙を受け取って姫を助けに来た」というメディとルークだった。

懐かしい旅の友の登場に力が溢れてくるアヴィと姫。形勢は逆転し、苦戦するフレイグは、キエルがアトラの指輪を「城に置いて来ている」のを知ったこともあり、一時撤退することに。

この2人のやり取りはホントに元気出ますねw
アヴィと姫の気持ち分かるわぁ。

開かれた世界

一行がトロイの思念体により「世界の始まり」へと導かれていたその間、実は夢世界では数ヶ月もの月日が流れていた。(マジびっくり

メディとルークはここに辿り着くまでの道中、さまざまな国で「トルークビルを支持する声」を耳にしたと言う。

フレイグはこの数ヶ月間、地の国や罪過の国など精力的に各国を渡り、利権争いや差別問題などに介入すると、横暴を働く者の夢をユメクイによって奪い眠らせることで、虐げられる者を救済して回っていた。

救われた多くの者たちの中には、フレイグの言う「価値のない人間には夢を与えない世界」に賛同する者も出始めている。

しかし、「誰もが平等に夢を与えられる世界」を実現しようと世界中を飛び回って来た姫とナビの姿をよく知る王子たちは、簡単にトルークビルを受け入れることなく、国民たちを説得しようと働いていると言う。

それはトロイメアをこれまでの「神聖な」「秘境の」「簡単には足を踏み入れられない」場所ではなく、「ごく身近な」「手の届く」ものに変えて来た「姫の力」だとメディ。

そうか、つまりわたしがたくさんガチャを回してたくさん王子様を目覚めさせて恋してきたことがここにきて効いてきてるってこと…!!!(ちがう

フレイグの動きも気にはなりつつ、一旦各国の王子たちを信じることにした姫。
それよりも今は数ヶ月間も行方知れずのまま放っておかれている「アダムのことが心配」だと言うことで、彼をつい先日見掛けたと言うメディとルークの証言を頼りに探しに出ることに。

ただ、フレイグが狙っている「アトラの指輪」も気になるので、キエルだけが一時アトラスに帰国し、指輪を持ち出して後から合流することになった。

今回トロイメアからアトラスのムーンロードは「トロイが特別な力で必要な時にだけ架けていた」ことも分かったんですが、夢世界がこれ以上同じ失敗を繰り返さないためには、これまで自分がトロイメアを「ごく身近な」「手の届く」ものに変えて来たように、アトラスもそうすべきだったと考えた姫は、「ムーンロードをこのままアトラスに架けっぱなしにしておくこと」をトロイにお願いするのだった。

戻りたい日

実は、トロイメアの祭壇でフレイグと対峙したとき、フレイグはシリルに「充分灸は据えた」「戻って来い」って言うんです。

するとルーファスは「良かったじゃん」「早く戻りなよ」って憎まれ口なんだけど最初は戻るように促します。
シリルが誰よりフレ兄のこと大好きで「アダム兄じゃなくてぼくを見て欲しい」って思ってるの知ってるからね。

でも、シリルは「戻らない」「あんな過去見ちゃったし」「フレ兄の言ってた話とちょっと違ったし」って言いにくそうに断る。「ぼくだって考えることくらいある」って。
イザークが「てめぇはごちゃごちゃ考えず黙って兄貴の言うこと聞いてりゃいい」っていつもの調子で言い返すんだけど、その一連のやり取り見てたルーファスが「ところでさぁ」って注意を自分に向けて、兄さんらがカチンと来るまで煽りまくって、フレイグに刺されちゃうんですよ。

そしたらイザークもイヴァンもびっくりする。「フレイグ兄さんそこまでするの?」って感じで。
これ、イザークやイヴァンには「フレイグが世界の更新に囚われ過ぎて光を見失っちゃうかも」「そうなって欲しくない」「気付いて」って、シリルには「お前が考えたいって言うなら俺が守る」って、めちゃめちゃルーファスらしい伝え方だなって思います。
本当は誰よりも寂しがり屋で愛情深いのに、兄弟たちにはいつも軽口で快楽主義の利己主義だって思われていたくて一生懸命こうやって振る舞ってきたんだろうなって。

でも、きっと一生兄弟6人の世界でだったら彼はずっとその快楽主義利己主義のままでいられたんだろうけど、姫や王子たちがその世界に入り込んできたことによって、たとえば「ルーファスはお前のためにこういう想いがあってこう言ったに決まってるだろ」ってシリルにバラしまくっちゃったり、なんやかんやでどんどん思惑通りにいかなくなっちゃって、最初はそういうの見抜かれて言葉にされることに物凄く苛立ってたルーファスなんだけど、少しずつ少しずつ「それも悪くないかな」って思えるようになってきてるのが今章なのかなって思いました。

前置き長くなっちゃったけど、今回めちゃくちゃぐっと来てしまったシーンを残しますw

トロイメアを発つ夜、ルーファスはひとり仲間たちから離れて謎トランシーバーでイヴァンに連絡します。
示威活動に夢中でアダムを放ったらかしのイヴァンに「あいつの手を離すなって言っただろ」って(この時点でイヴァンとアダムのことめっちゃ心配してるのもう隠さないんだなってちょっと思う

イヴァンが「手を離してなんかない」「大切なものがないルーファス兄さんには分からない」って言い返すと、「俺にだって大切なものくらいある」ってルーファス。

会話を立ち聞きしてたシリルが「ルー兄の大切なものってなに?」「どうせはぐらかして教えてくれないだろうけど」って言うと、自分には「戻りたい日がある」って言ってめっちゃ語ってくれる。家族みんなが笑って、幸せで、温かいなって思ったとかって。もう出会った頃のルーファスからは考えられないですよね。

しかも、「そんな日なかったじゃん」「毎日苦しかったじゃん」ってシリルが言うと、ルーファスがめちゃくちゃ優し気な声で、「あったんだよ」「お前が生まれた日だよ」って。涙

9章は涙腺ぶっ壊れてたのでガチ泣きしました。
君は家族みんなに愛されて生まれたんだよシリル、忘れないでね

最後に

めちゃくちゃどうでもいいことなんですけど、メディがルーファスとシリルのこと「セクシーボーイ」「ツンツンボーイ」って呼んだらルーファスが笑ってくれたw

ヒナタもカイリもワガママボーイだのクールボーイだの呼ばれてたけど1度もまともに反応してくれたことなくて一生「ハイハイ」とか「ああそうだな(てきとう」とか言われてたから笑ってもらえて嬉しいw